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産業ツーリズムの可能性

平成20年度 日本計画行政学会 関西支部 研究大会
『ホンマの観光まちづくりってなんや!』 所収
テーマ報告論文「信楽の産業ツーリズムの可能性」(pdf版)
平成20年6月21日(土) 龍谷大学 大谷学舎
主催:日本計画行政学会開催支部

高校生のレストラン・まごの店(三重県・多気町)

「高校生のレストラン・まごの店」は、地域資源活用型の活性化事例の中でも異色な事例のひとつで、感動したっと叫びたいほど。
三重県の山あいのまち・多気町唯一の高校である相可高校。その食物調理科の生徒たちがクラブ活動として運営する店。その「まごの店」と特産品販売で人気の「おばあちゃんの店」のある体験交流施設を管理する住民組織「五桂池ふるさと村」、地元の農業者、企業、住民、行政など、まちぐるみの全面的な応援のもとに成り立っている。

大阪の調理専門学校からUターンした教員(村林新吾先生)が、正規のカリキュラムだけでは伝えきれない調理、創造的、実践的な教育の場づくりを目ざした型破りな「クラブ活動」として、調理と接客を指導している。土日や春夏冬の休み期間中だけの営業で年間1500万円を売り上げる。その収益は部活の会計に蓄えられており、新たな創作料理開発に必要な食材の購入費や全国各地で行なわれる料理コンテスト出場の際の交通費に充てられるなど、人づくりへと再投資される。
また、地域産業にも貢献し、地元の酒造メーカーと組んで化合部無添加の「相可高校認定醤油」の開発・販売なども行なっている。

「まごの店」を訪れるお客さんたちにとって、地産地消の安全安心な素材や、若い感性から生まれる仏・伊・さまざまな創作料理と、その味が大きな魅力であることは言うまでもない。しかし、それ以上に高校生たちを温かく見守り、育んでいくんだという気概あふれる顔がある。ここでは、まさに、供給・需要双方による「共創」が現実のものとなっている。

相可高校の存在は、まちの誇りであり、売上げという経済効果がかすんで見えるほど、地域活性化の「原動力」となっているのは間違いない。

# Cとつながる・・・

Consumer/Customerは、需要サイド・マーケットにいる人たちで、ABが生み出す商品やサービスを享受(消費)する。また、新しい商品やサービスから、新たなマーケットが創造されることもある。
三者のDynamic な相互作用をへて、商品・サービスの開発、事業化、持続・発展へとステージをあがっていく。
Area内の地域資源をネタに、売れる商品・サービスを新たに開発したり、あるいは改良により価値を高め、生産体制や流通経路にのせるための事業化を進め、さらに、必要な体制や仕組みを構築していかなくてはならない。
そこでは、商品・サービスの質を高めるための産学連携といった取組みや、スムースに流通・マッチングさせるための中間ユーザーによる媒介(B2B2C)、行政支援などによって、効果が最大化される。
そして、と、の三者のあいだの「信頼」関係が育まれることによって、それぞれがEmpowerment され、より確かな持続可能なものへと発展していくはず、と考えている。

# AとBの重なり・・・

Areaの日本語訳は、正確には「領域」で、少しニュアンスが違うのだけれど、「エリア・マーケティング」といった用語が普及しているように、面をイメージさせること、あと、全体の語呂がいいので使っている。都市部、地方といった立地、都市規模・コミュニティの範囲など、そこに存在する人、モノ、金、情報といった地域資源の多寡が、展開される事業を加速したり抑制したりする大きな要因になっているはず。
そして、Businessは、ビジネス・事業、もう少し広げて、産業集積、逆にコミュニティ・ビジネスといったものも含めて考えている。
ABの輪がすこし重なっているのは、産業分野や事業活動によって、が不可分なものと、そうでないものがありそうで、そのあたりを意識している。

あるシンポジウムのパネラーとして招いた旅館の女将さんは、右手と左手のこぶしを交互に、そして、最後には両方掲げながら、こう語られたのが印象に残っている ―
まちがあってこそ自分たちがあり、自分たちの仕事があってまちがあるのだ」、と。
まさに、ABの重なりの上にたつ人の言葉。

「中心市街地の活性化に関する法律」

平成10年7月に「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律(略称:中心市街地整備改善活性化法)」が施行。
平成18年8月に、「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律」が施行され、題名も「中心市街地の活性化に関する法律」に改められた。



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# ABCで考える地域資源活用型の産業振興

ABC+D= E
Area〔地域〕とBusiness〔ビジネス〕、そして、Consumer / Customer 〔消費者・顧客〕。それらがDynamic〔動的〕に相互作用を繰り返しながら、Empowerment していく〔エンパワーメント・力をつける〕。
この5つのことばをキーワードに、地域振興や商業活性化、まちづくりの新しい動きを整理していきたい。

ABC+DE

事業効果の「見える化」によるイノベーション

主催者・当事者が漠然と意識していたことが如実に表れた値である。こうした効果分析のシュミレーションは、主催者側の目標に対する評価や到達度を数値化、「見える化」することにより、道標の設定を容易にする。表をながめながら、「合格ラインは何点?」、「次は90点を目指そう。そのために何が必要?」といった議論につながれば、段階的かつ具体的なイノベーションの道筋が明らかになることだろう。
さて、【経済波及効果】については、当初から、タレントさん目当ての集客を企図したものではなかったこともあり、直接的な効果は期待していなかった。…… いやいや、「探険ツアー」中に、まさとさん、シルクさんたちには、お土産をぎょうさん買うていただいて、地域経済にも貢献いただきました。

活性化事業の効果を測る「通信簿」

市民、商業者ら約100名が参加、運営のための商店街スタッフは30名近くに及び、夜なべ会議も繰り返された。その行動力はさすが。地域ブランド形成につながる情報発信として、NHKでの放映をはじめ、新聞各紙にも掲載。また、当初の企画には無かった「城下町検定」の流れと合流することで、一過性ではないイベントとして、内容に厚みが生まれた。
【アウトカム】については、参加者アンケートを実施。全体的に、高い評価をいただき、多くの方から「次回も参加したい」との回答があった。また、事業のねらいに即した四項目について5段階評価をお願いし、各々、期待値と差引きすることにより、パフォーマンス(事業運営)の良し悪しを測ろうと試みた。

結果は、百点満点に換算すると、上表の通り。①については、◎(二重丸)のタレントさんの本領発揮。②では、会場との意見交換に時間が割けなかったという反省点が浮かび上がる。③や④を見ると、「きっかけ」をとび越えて「行動」を促す、より強い意識づけにまで及んだのではないかと、期待が膨らむ。

 

まちづくりの「笑い」の効能トライアル

昨年の12月初旬、彦根市中心部に位置する宗安寺本堂を舞台に、彦根商店街連盟主催『「あるいて、笑ろうて、まちづくり!」 笑わせてなんぼのタウンミーティング』が開催された。
「城下町検定」に合格した「大使」と、里見まさと・シルク・ロザンの吉本興業所属のゲスト4名が、商店街の自慢店舗10店を巡る「まちなか探険ツアー」。ひき続いて、活性化について語り合う「タウンミーティング」の二部構成。ねらいは三つ。しかめっ面の堅苦しい議論の場でなく、笑いながら突飛なアイデア、発想の転換も受け容れる、楽しい議論の場をつくりたい。商業者には耳の痛い苦言も含め、消費者の意見を吸い上げること、生の声を聞き、両者が交わること。そして、地域の活性化に向けた輪を拡げ、個々の生活や商売のスタイルを見直す契機にしたい。笑いに包まれた会場では、まさとさんから、彦根のまちは「商売人の遊びこころが乏しい」「国宝・彦根城が泣いている」と厳しくも的をえたご指摘をいただき、実家が和菓子屋を営むというシルクさんからも、空き店舗の活用や顧客ターゲットの絞り方など説得力のあるご発言。ロザンのお二人には、場を盛上げながら、「臭い!鮒寿司でまちを売り出そう」など、斬新な発想で頭のスイッチを「およよっ」と切り替えていただいた。
こうして盛況のうちに終了したのだけれど、この事業自体、日本初のトライアルでもあり、その効果は??という自問自答から、プチ効果分析を試みた。

 

第2ステージに向かう活性化

今年3月にはTMO構想を策定し、町の認定を受ける段階にきた。さらに、新たにタウン・マネージメント機関として、既存組織の集約再編も視野に入れた、まちづくり会社の設立準備を進めている。まちづくり活動とその情報を一元化し、総合的に事業をプロデュースする専門人材を配置することを目指している。
また、この春には、「波の湯・茜」がオープンした。最初の写真の横断幕にあった露天風呂である。その名の通り、堤防の外、テトラポットの上にある。波が打ち寄せる湯につかり、夕日を眺める。ここを集客の拠点に、相乗効果を狙った新しいまちづくりに向けて、地場産品直売フェア等の試行イベントが進められている。地域のポテンシャルを高め、施設計画のフィジービリティ・スタディを具体化しようとするものである。
現実には、TMO構想はできたけれど、事業へ移行できない中心市街地が多い。まちづくりの主体となる人材の確保、住民・関係機関等との合意形成や資金調達といった課題のために、多くの労力と時間が費やされ、次のステップに辿りつけないところが多い。
島根県松江市の天神町商店街では、中心市街地活性化を契機として、高齢者をターゲットにした商店街づくりを推進している。ボケ封じの天神さんまで建立し、月1回の縁日を催し集客を図るなど、短期間に成果をあげている。全国からの視察が絶えず、ハコもの・ハードに頼らずとも、まちの活性化は十分可能なことを示している。
小浜町中心市街地のまちづくりも、民間・住民主導で、知恵を絞りながら取組みを重ねてきた。ようやく、将来のまちの方向性がかたちを顕しつつある。これからの頑張りの継続にかかっていることは、もちろんだが、福祉と集客・商業とが複合した、新たな温泉観光地のモデルを小浜温泉が提示する日は近い。

(社)日本建築協会 発行 『建築と社会』 所収、
「長崎県小浜町「こころポカポカ小浜温泉」を目指したまちづくり」より

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